秘密の地図を描こう

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 キラの拾い癖については知っているつもりだった。自分もやはり彼に拾われた身だし、と心の中で付け加える。
 しかし、だ。
「お前は、何を拾ってきているんだ?」
 落ち込んでいるかと思えば、とカガリがため息混じりに問いかけている。しかし、それは周囲の者達も同じだ。
「まだ、オーブの連中はいい。あいつらもこちらに気が立っていたようだしな」
 アークエンジェルの人材不足も解消されるだろうし、と彼女は続ける。
「しかし、あれは別だ!」
 そう言いながら彼女が指さした先には、半壊したアビスが存在していた。
「だって……あのまま放っておいたら、間違いなく死んでいたよ、彼……」
 それがわかっていたのに、見捨てられない。キラはそう言い返す。
「キラの性格だとそうだよな」
 ため息とともにマードックが呟く。
「ともかく、あいつは拘束するぞ。けがの治療はさせるが」
 いいな? とバルトフェルドがキラに問いかけている。
「……仕方がありません……」
 それは妥協する、とキラは小さな声で告げた。基本として、けが人に手を出したくはないのだろう。
「大丈夫だ。せいぜい、手足を拘束するだけだからね」
 別にがんじがらめにするわけではない。ラウは苦笑とともにそう言った。
「もっとも、それだけでは足りないかもしれないが」
 さりげなく付け加える。
「ラウさん?」
 意味がわからない、とキラが言外に問いかけてきた。
「何か気になるのか?」
「えぇ。あの機体の動きが妙でしたので。他にももう何機か……」
 コーディネイターならば納得するが、どう考えても違うようだ。
「キラとニコルに少しがんばってもらわないといけないかもしれないですね」
 思い切り不本意だが、とため息混じりに付け加える。
「なるほど」
 どうやら、これだけでラウが何を言いたいのか察したらしい。バルトフェルドがうなずいて見せた。
「そう言うことなら、あちらに情報があるかもしれないな。連絡を取ってみればいい」
 もちろんお前たちがな、と彼は続ける。
「それに関しては、僕がやっておきます」
 即座にニコルが口を挟んだ。
「その方がスムーズに進むでしょうし」
 他にもいろいろと、と彼は笑う。
「……アスランか……」
 あえて誰もその名前を出さなかったものを、と思いながらカガリを見つめる。
「生きているなら、もう少し頭を冷やして、自分の何が悪かったのか、レポートを提出しろ……と伝えてくれ。私とラクスが合格点を出せたなら、会ってやってもいいともな」
 自分が、とカガリは言う。
「わかりました。そう言うことでしたら、しっかりと伝えさせていただきます」
 ニコルが楽しげな表情になった理由は確認しなくても想像が付くのだろう。キラが複雑な表情を作っている。
「合格点が付く日があるのか?」
 カナードが真顔で問いかけの言葉を口にした。
「あいつの態度次第だな」
 カガリがそう言い返している。
「まぁ、当面は無理だろう。だが、私の気晴らしにはなる」
 あいつもそれなりに本望だろう。まじめな表情でカガリは言い切った。もっとも、それが無理をしているように見えないわけではない。
「……アスランも、カガリぐらい割り切ってくれればいいのに」
 それに気づかないふりをしてキラが言葉を口にする。
「いっそ、アスランを嫁にもらうか?」
 嫁いびりをしてもいいぞ、と彼女はキラに向かって言う。
「それは……ラクスに任せていい?」
 それに対するキラの言葉に、その場に笑いの渦がわき上がった。

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